2008年 03月 28日
後期は毎週水曜夕方に"Uncensored History of International Law"と題する授業を受けています。直訳すると"検閲されていない国際法の歴史”といった感じでしょうが、要するに、国際法の形成・深化に影響を与えたが一般的な国際法の授業では取り扱われない、いわば表舞台に出ない歴史的事実を検証しようみたいな授業です。 イギリスの大学に本籍がある人格円やかな教授が担当で、読み物・授業とも内容が十分理解できればかなりおもしろそうな雰囲気ですが、いかんせん根本的な英語力不足に加え、読む量がかなり多く、かつ殊に歴史系の文献には通常の英和辞書にのっていない単語もかなり出てきます。さらにヨーロッパで発展した国際法だけあって、ヨーロッパ史の流れを理解していないとフォローするのがかなりきついです。いざ何かを勉強しようと思うと高校・大学を通じて教養の涵養を完全に疎かにしていたツケが至るところで出てきます。 前回の授業は日本関連の文献が題材でした。一つは、東京裁判でのインドのPal判事の無罪意見とその根底・背景にある国際法上の論点を検証したもの、もう一つは、慰安婦問題に関しNGO主催で2000年に東京で開かれた"裁判"(あくまで私的な催しで法的な裁判ではないです)の意味を論じるものでした。 後者は慰安婦問題の実体的内容ではなく、そのような裁判を模した私的なイベントに意味があるかに焦点があてられています。裁判官役に元国際司法裁判所の判事を呼ぶなど陣容はそれなりに充実したメンバーだったようです。所詮模擬裁判と言えばそうなのですが、政治と密接不可分な国際法の世界では、直接的な法的な効力がなくても国際社会に対する事実上のインパクト(例えばイベントを通した世論喚起など)があれば、国際"法”上も意味があると理解され得る雰囲気があるようです。その意味で国際法は"法”なのかという哲学的な議論とも関連するわけですが、実務的な状況を考えると、こういった点が国際法のおもしろさであり、かつ同時に限界でもあるのかなという気はします。 "When Japan was a secret"と題するエコノミストの記事も、黒船来航前に漂流しアメリカに辿り着いた日本人3人を描いたもので、なかなかおもしろかったです。開国前の日本は"秘密"の存在というわけですが、日本はそれ以前より厳然と存在していたのであり、それはあくまで欧米ベースの発想ですとつい思います。さて3人の漂流者。 重吉(Jukichi)ー彼は1813年に江戸を出航した後なんと1年半の漂流を経てカリフォルニア沿岸にたどり着き4年後に無事日本に帰国したようです。記事によると彼が記録に残るアメリカに最初に上陸した日本人とのことです。 音吉(Otokichi)ー彼は漂流の末西海岸の現在のワシントン州北部に流れ着き、そこからロンドン、マカオを経由した後、アメリカ商船で日本に戻ろうとしたものの、江戸、鹿児島で砲撃に見舞われ、結局マカオに戻らざるを得なかったようです。もっとも、彼はそれから上海のイギリス貿易会社で働くなどして豊かな生活を送ったようで、またイギリス人女性と結婚した日本人も彼がおそらく初めてとのことです。その後、名前をJohn Matthew Ottoson(おとそん!)として、日本にもイギリス側の人間として2回渡ったようです。 そしてジョン万次郎。 重吉、音吉、万次郎。彼らの目にアメリカ、そしてその後見た日本がどのように映ったのだろうなどと思いを馳せてしまいます。 こういう形で日本の新しい側面を学ぶのはなかなか新鮮です!
by bluecorner2007
| 2008-03-28 22:43
| Michigan-Law School
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